
ランチア・テーマは84年初出ですので、私の個体は91年製造といえど80年代のクルマということになります。
当時の夏がどのくらいの気温だったか、気象庁のデータを漁ってみました。東京都、8月の平均気温(24時間平均を1日ごとに出し、その31日間の平均)を80年から90年までの11年間分調べてみました。80年が極端な冷夏であったことを除くと最低26.1℃、最高28.6℃でした。
これに対し、2025年8月は29.63℃。あまりにも過酷です。
SNSでも「涼しい午前中のうちに宿題をやりなさい、という言い回しの”涼しい午前中”は既に存在していない」という話題が大きな反響を呼んでいたのが記憶に新しいです。
一方地中海沿岸、イタリアの夏は日本に比べると2~5℃程度涼しく、また湿度が低いのが特徴です。オリーブに代表される硬葉樹がその気候を良く反映しています。
そもそもこの地中海性気候がマイルドな環境だからこそヨーロッパは高緯度の割に人類文明が豊かに発展したワケで(諸説あると思います。信じないでください。)、クルマにとってもマイルドな環境であるに違いありません。
テーマの視点に立てば、「ただでさえ設計された本国よりも厳しい夏を迎える国で35年の月日が経過し、さらに厳しい夏が迫っている」という状況です。
クルマは純正がベストバランス、とは私も思いますが、テーマのクーリングに関しては強化しておかないと東京都内での運用は厳しいと言わざるを得ません。実際オーナーズクラブの方にも、都内で夏に乗るなら強化は必須とのアドバイスを頂きました。
そこでこのブログではこの夏、テーマで真夏の環八を駆け抜けるべく(実際にはやらないと思います。36℃とかの中の渋滞をテーマで走ったら、クルマどころかこっちの身が持ちません)、いくつかの対策を施す様子をお届けします。
今回はサーモスイッチをローテンプ仕様に交換します。と書けばわざわざここまで記事を読みに来る方にはご理解いただけそうですが、一応私のわかる範囲で原理と効果を記します。
テーマの電動ファンは、助手席足元パネル裏に設置されたリレーによって制御されています。そして、電動ファンを作動させるトリガーとしてラジエーターにサーモスイッチが設置されています。
サーモスイッチはその名の通り温度によってオンオフが制御されるスイッチです。例えば90℃オン - 80℃オフという仕様であれば、クーラントが90℃になるとスイッチが導通してリレーに電流が流れ、それによって電動ファンが回り始めます。電動ファンはラジエーターに空気を通してクーラントを冷やしますから、それによって80℃になるとスイッチの導通が途切れ、電動ファンも止まるという仕組みです。
エンジンはある程度の温度がないと燃料の霧化、オイルの粘性、燃焼等の観点で設計されたスペックを発揮できませんから、電動ファンやサーモスタットのオンオフによって適正な温度を保てるように設計されています。
しかし先述の通り、テーマの設計時に想定されたよりも現在の日本の夏ははるかに暑いので、電動ファンによる冷却も本来のようにはなされない可能性が高いです。そうなるとエンジンの冷却不足、つまりオーバーヒートを起こして立ち往生する可能性が出て来ます。
冷却能力を向上する方法はいくつかありますが、パッとおもいつくアプローチは以下の通りです。
今回は3番目、電動ファンを早く回し始めればオーバーヒートの可能性は下がるだろう、というアプローチで対策を打ちます。低温で作動する温度スイッチ、要するにローテンプサーモスイッチへの交換が今回の作業内容です。
さて純正部品すら国内にはろくに在庫していないテーマですが、果たしてそんな都合よくローテンプのスイッチなんで見つかるのでしょうか?
結論:あります。オーナーズクラブの知り合いが書いたこちらのブログを参考に、部品を発注しました。
ちなみにターボ16Vに純正搭載されているサーモスイッチは92℃オン、87℃オフのようです。パーツリストで純製品番を調べ、海外サイトでOEM品を調べてみました。

こちらのサイトより画像拝借。ちなみにこのOEM品もすべて供給終了となっていました。
それに対し、今回発注したこちらのサーモスイッチは85℃オン - 75℃オフのため、純正マイナス7℃でのオンとなります。これなら効果はありそうです。

今回発注したサーモスイッチのラベル。ケータハム用の社外品ではありますがネジ径、ピッチが同じですので互換があります。ケータハムの社外品であれば、しばらくは供給が絶えなさそうなのもうれしいですね。
ところで、私のテーマが電動ファンを回し始めるのは、メーター読みで水温110℃弱になってからです。そのため常に心臓に悪いのですが、これはサーモスイッチがラジエーター下端、メーターが読んでいる水温センサーがサーモスタット、つまりラジエーター手前にあることが大きな原因です。
ラジエーター下端には冷却の完了したクーラントが流れて来ますから、そこで92℃になるころには、冷却前の水温は100℃を超えています。その水温をメーターに表示するので、私はひやひやするわけです。
御託はここまで。工具を用意して、いざいざ作業と参りましょう。
テーマは車高が高いので、スロープに乗せるだけでフロントバンパーの下に潜り込めます。今回はジャッキ・ウマの類は使用せず、スロープに前輪を乗せた状態で作業しました。
サーモスイッチにつながっているハーネスを外し、溢れてくるクーラントを受け止めるバケツを自分の横に置いてアプローチします。

3本のハーネスが生えている、正面にあるのがサーモスイッチです。サイズは29mm。
29mmのソケットは用意していたのですが深さが足りず、ハーネスも邪魔なので入りません。
今回はモンキーレンチでアプローチすることにしました。
写真にも映っているエアコンの配管が中々邪魔で頭の大きいモンキーを押し込むのに苦戦しましたが、なんとか押し込んで回します。ここは流石の状態の良さ、固着のコの字もなくあっさり回り、赤いクーラントが滲んできます。
あとは右手に新しいスイッチを持ち、左手で元のスイッチを回して外します。左腕全域にクーラントを被る被害を受けましたが、なんとか手で回るところまで押し込み漏れを止めます。
その後すぐに29mmのソケットとラチェットを嵌めて、本締めをします。

新しい方のスイッチはコンパクトな仕様なので、このようにソケットにすっぽり入ります。扱いやすいです。
本締めが完了したら、車体にかかってしまったクーラントをふき取り新しいハーネスを繋げます。新しいスイッチには一般的な平型端子が生えていましたので、対応するギボシで元のハーネスと接続しました。

取り外した元のスイッチです。似たような形状のスイッチの画像は品番で検索しても出てこないので、これもOEM品や他車種流用だったのかもしれません。
スイッチの交換が完了したら暖機運転を行い、作動温度を検証します。長く長く感じたアイドリングの後、ファンが回り始めた時の水温計がこちらです。

メーター読みでおよそ98℃といったところですね。
その後アイドリングを続け、ファンが止まった時の水温計がこちらです。

メーター読みで91℃くらいでしょうか。
大体95~100℃くらいでファンON、90℃くらいでOFFになるイメージですので、これでやっと「ちょうどいい」くらいの感じですね。
以上、ローテンプサーモスイッチの導入でした。一般的にローテンプ化というとサーキット走行など、高負荷領域を多用する車両において冷却能力を高めるカスタムという印象がありますが、今回はどちらかと言うとかなり高めな純正の温度設定を標準レベルに引き下げ、冷却にマージンを持たせる「戻し」のカスタムでした。
ただまだ7℃分のマージンができただけですし、これでやっとスタートラインに立ったような感覚です。次は冷却能力自体の向上に手を付けようと思いますので、part2もご期待ください。