
の個人サイトにも記載されているとおり、
にとって事実上初めてのマイカーはコルトラリーアートバージョンRです。そのためコルトという車にはちょっと特別な思い入れがあるのですが、イタリア車にハマってしまった今となってはコルトの内外装は
を満足させるものとは言いづらく(新車価格が違うので当たり前のことです、156GTAの3分の1の値段で買えたんですよ)中々買いなおす機会というのはありませんでした。
そんな中、大学の後輩が初めてのマイカーに買ったコルトを数カ月で事故らせたという話を聞きました。さらに、ショップでいい値段(大学生からしたらかなりの値段と言えます)の見積もりを提示されたらしくモチベーションがなくなって手放すというのです。
は直接の知り合いではなかったのですが
が彼と知り合いだというので、話をつけてもらい
が引き取ることとなりました。
事故の内容としては若気の至りで右フロントを(おそらく)縁石にヒットさせ、バンパー下部と右フロントホイールが損傷、脚が折れ曲がってフェンダーにあたり自走不能といった具合です。


引き取り時の状態。自走は無理なので陸送しました。
脚が折れた割には外装の損傷は最低限で、とりあえず足回りを交換してまっすぐ走ってくれるようになれば、あとは寛容な心で許せるくらいの状態でした。足回りの事故というのは想定外の箇所にダメージが拡散するものなので、実際どうなっているかはバラしてみないとわかりません。ドキドキワクワクの気持ちでジャッキアップしていきます。
引き取り前に準備はしておこうということで、コルトのパーツリストとにらめっこしたり、車整備の諸先輩方と相談しながら事前発注するパーツを決めました。
写真を見るにロアアームの折れ曲がりは確実、スタビリンクも確実に曲がっているだろうという診断になり、それぞれ部品を手配します。ロアアームは単価が高いので中古品をヤフオクで手配、スタビリンクは品番から検索をかけてモノタロウで新品を発注します。流石に業販価格よりは高くなりますが、純正部品を我々エンドユーザーがネットから簡単に頼める数少ない手段です。いつもありがとう。
車両を引き取ったその日に作業場所に運び込み、事前発注した部品を携えて足回りをバラしていきます。
まずはホイールを外し、ブレーキキャリパー、ブレーキローターを外します。コルトのフロントはマクファーソンストラットというよくあるヤツなので、ハブを吊っているのはストラットだけです。ストラットを固定しているボルトナット2組を外すと、ハブはステアリングラックとロアアームで固定されているのみとなり、ロアアームのボールジョイントを中心にぐりぐり動くようになります。

このあたりはボルト類の取り回しもよく、仮に固着していたとしてもそれほど苦戦することはないですね。
つづいてハブナットを緩めます。コルトの場合は32mm、今回はエアインパクトで緩めました。ジャッキアップ前にブレーカーバーで最初の一撃だけ緩めておいたほうが、固着のリスクを考えると安心かもしれません。
ハブナットをとると、ドライブシャフトはスプラインでハブにハマっているだけになります。あとはハブを手前に引きながらドライブシャフトの先端をハンマーでたたき、ドライブシャフトをハブから抜き取ります。ハブは完全にフリーになっているわけではないので、ドラシャがズッコケたような見た目になります。

今回は事故の衝撃でドラシャが破損したためグリスはダダ洩れの状態でした。整備前にざっくり拭き取ってはいます。
写真をよく見るとわかりますが、ここでドライブシャフトが破損していたことが発覚します。ブーツは奇跡的に破れることすらなく無事だったのですが、アウターケースとでも呼ぶのでしょうか、金属の円筒部分が完全に割れており交換が必要な状態です。ただこの時点でドライブシャフトの部品は手配していないので、いったんスルーして作業を進めます。
ドライブシャフトがズレるとロアアームとハブを固定しているボールジョイントのナットにアクセスできます。ナットを外してロアアームをハンマーでたたきます。ロアアームがズレればあとは手で引き抜けますので、ほぼフリーになったハブをストラットのバネあたりにつるしておきます。

ロアアームはボディ側2点、ハブ側1点の3点を支えています。これでハブ側がフリーになったので、次はボディ側を外します。
なお、取り外す際に目視で確認したところボディ側、つまりロアアームが止まるフロントメンバーには歪みは認められませんでした。交換するロアアームがしっかりハマってくれれば問題ないでしょう。
なおフロントメンバー前側のボルトを取り外す際、ボルトがオイルフィルターにつっかえて外せないことに気づきました(実は上の画像でつっかえているのがわかります)。設計の欠陥ではないのか...?と思いましたが、オイルは交換しておくに越したことはないのでついでにオイルを交換していきます。幸いコルトの純正指定は30粘度で手持ちがあり、フィルターも近くに転がっていたスバル用と規格が共通でしたのでそれらを用いて交換作業をすることにします。
とりあえずはフィルターが邪魔なのでオイルドレンボルトとオイルフィルターを外しておきます。オイルが抜けるのを待つ時間はいつも暇ですが、今回は作業が残っているのでちょうど良いですね。
各方向への衝撃を分散させるためでしょう、メンバー前側のボルトは前後方向、後ろ側のボルトは上下方向に刺さっています。それぞれ外したあと、スタビリンクを外します。
スタビリンクはボルト側をトルクスで回り止めしながらナットを回す構造ですが、ここでトルクスのビットが折れます。ネットにも折れたという情報があったので、回り止めをするには細すぎるのかもしれません。ただ直接の原因は工具が安物だからだと思います。TONEとかKTCあたりを使いましょう。
はお金がないので基本的になんちゃらプロダクツ、DIYでやる分には困りませんがこういう時に価格差は出ます。
気合いを入れてプライヤーを両手で握りしめてトルクをかけ、今回の整備を横で見ていた整備の先輩にラチェットを持ってもらいなんとか回します。今回最も手間がかかった工程はここでしたね。
全て終わったらロアアームを摘出します。ブッシュが噛んでいて落ちてはこないので、ハンマーでたたいて落とします。


摘出したロアアーム。横からみるとぐにゃりと曲がっているのがわかります。小さいほうの丸穴にスタビリンクが刺さる構造です。
あとは逆手順。ロアアームをフロントメンバーに固定し、新品のスタビリンクを取り付け、足回りをもとに戻していきます。ちなみにロアアームはしっかりハマったのでメンバーに歪みはないものと判断して間違いないでしょう。
なお、今回は追ってドライブシャフトを交換する必要が出たためやっていませんが、ハブナットは原則再使用禁止です。新品を用意しましょう。
また、今回は事故の際にインナーフェンダーを貫いてタイヤがフェンダーの塗装を剝いでしまっていました。このままではここからボディが腐っていきますので、清掃の上シャシブラを吹いてさび止めを行います。

一通り組み戻した状態がこちらです。
ホイールをつけて下ろし、私有地内を行ったり来たりして異常を確かめます。幸いアライメントに体感できるほどの狂いはなく、ステアリングを切ってもアッパーマウントからの異音はありません。残るはドライブシャフトの交換のみとなり、後編へ続きます。
事前にドライブシャフトを購入し、整備に臨みます。足回りをバラすところまでは前編の繰り返しです。ドライブシャフトをフリーにするところまで完了したら下に潜ります。なお、後編の整備は
が手伝ってくれています。

ハブをズラしてドライブシャフトを見やすくします。ちなみにアウターのドラシャブーツは応急処置としてタイラップで縛った状態です。私有地内を移動するのにグリスを撒かれては困りますので...。
今回の交換対象となる右ドライブシャフトは、左右非対称な横置きFFの構造の中で長いほうのドライブシャフトとなります。そのため、中間地点にボディ側へのマウントポジションがあります。コルトでは上下2本のボルト止めとなっており、これを外すといよいよシャフトは抜くだけという状態になります。

すでにボルトを緩めた状態です。シャフトにベアリングを作ってこの大きさの部品でマウントするとは、洗練された素晴らしい構造です。 全般的にボルトの固着も少なく、固着したボルトを破断させまくったでおなじみ
は安心して作業できました。
ミッションオイルの補充を最小限にするため、シャフトを一瞬で抜き差しすることで必要な量を保ちます。
がホイールハウスから一気にシャフトを抜き取り、すぐさま新しいシャフトを差し込みます。
は先ほどのベアリングのあたりに潜り、微調整してシャフトをミッションへカチコミます。漏れたミッションオイルの量は20mL程度です。
ミッションオイルのフィラーから液量が問題ないことを確かめ、逆手順で全体をもとに戻していきます。

摘出したドライブシャフト。アウターケースの割れ以外は悪い状態ではありませんでした。

下ろす直前に撮影した一枚。交換したドラシャも中古品ではありますがドラシャブーツの劣化も最低限で、しばらくは破れなさそうです。
最後に、今回のコルトは15年落ち12万kmですがタイミングベルトは無交換です。エンジンルームからベルトカバーのボルトをいくつか外し、ベルトの状態を確認しておきました。

表面に細かいひび割れはありますが、今すぐ交換しないとヤバい!というほどではなさそうです。
もちろん時期が時期なのですでに部品は手配していますが、とりあえず回送するくらいなら大丈夫でしょう。テーマも156も15年落ち12万kmの半分にも満たずにちぎれてブローすると思いますが、さすがは日本車。ゴム系の部品の耐久性はピカイチですね。
以上、コルトの事故車修理でした。
このあと試走を兼ねてそこそこの距離を回送しましたが、ブッシュ類からの異音やアライメントの狂いはなし、チェックランプ類の点灯もなく上々の仕上がりといった具合です。ほかの足回りのブッシュ類もまだまだ元気なのか、ちゃんと静かに走ります。
タイベル交換のほか、右リアブレーキのパッドのあたりが終わっているのでキャリパーO/H(たしかバージョンRは専用品でO/Hキットがなかったような...)はやったほうがよさそうですが、車検は今のままでも通るくらいの状態だと思います。
最後に、それなりに走るならスタッドレスはやめましょう。コルトの純正タイヤはAD08ですよ?車がかわいそうです。